沖縄で考える。ラーメンとインバウンド


さて今回は内閣府の委員会で久しぶりに沖縄に来る機会をいただきました。

今回のテーマは、沖縄県産の一次産品消費・農家民泊をいかにインバウンドを通じて拡大するかというテーマだったのですが、その中に沖縄県内の外国人観光客による外食の実態についての調査も含まれていました。

詳細は公式に発表される前なので明かせませんが沖縄県を訪れる外国人旅行者に人気の外食メニューとして「ラーメン」があがっていました。

もちろん、訪日外国人旅行者にラーメンが人気であることは周知のとおりです。

北海道から博多豚骨ラーメンの本場福岡まで、ラーメン店に列をなす外国人旅行者の姿もこのところは当たり前の風景になってきましたし、ラーメンの「母国」中国大陸からの旅行者も例外ではありません。中国ではラーメンは「日式拉麺」としてもはや立派な日本料理として認識されていますし、ヨーロッパでは地元住民と日本人ではないアジア人旅行者が日本のラーメン店に並ぶ、そんな光景もよく見かけます。

 

マドリッドのラーメン店。この日はスペイン人と韓国人が列をなしていた。

そんな中、今回の調査の一つ目の驚きは「沖縄でも」という点でした。

もちろん那覇市内をはじめ、沖縄にも知る人ぞ知るラーメンの名店があります。

ただ、沖縄の麺類と言えば「沖縄そば」が不動の地位を築いています。

また、そもそも沖縄を訪れる訪日外国人旅行者の多くは比較的訪日経験の浅い旅行者が中心。

台湾人旅行者にとって沖縄は「最も近い(地理的にも心理的にも)外国」であり中国大陸からの旅行者にとって沖縄へのクルーズ旅行は、「安く行ける外国ツアー」の代表です。

そんな彼らが沖縄県内で外食する際に「日式拉麺」を選んでいるのは少し驚きでした。

これはラーメンが本当の意味でアジア各国のかなり幅広い層に日本の魅力として認識されていることを意味しているのではないでしょうか。いわゆる流行に敏感な都市部の若い層だけでなく、「初めての海外旅行」というような地方の(中国大陸で言えば内陸部の)比較的年齢層の高い旅行者も「日本に行ったらラーメンを食べたい!」と思っているようです。

北京市内の「日式拉麺」店。内装も日本のラーメン店を意識している。

そしてもうひとつの驚きはそれがもたらした「変化」でした。

那覇市内にあるかつて行きつけだったとあるラーメン店に足を運んだところ

夜の11時過ぎにもかかわらず店の前には外国人旅行者の列。店内に目を向けても外国人旅行者「しか」いないのです。

お店の方に聞いたら「一日340杯くらい売上げますが日本人は10杯くらいですよ」とのこと。以前はこの店で外国人旅行者の姿を見ることもなかったのに、いまや日本人はこのお店では珍しい存在なのです。

そう言われてみれば店内の雰囲気もどことなく以前と変わった気が。

メニューは繁体字、簡体字、韓国語、英語表記が加えられ

お店の外の並び方、列のつくり方の注意まで多言語表記になっています。

そしてかつて卓上にあった調味料や漬け物などがありません。

理由を聞いたら「外国人旅行者が味が変わるほどドバドバ入れるし、漬け物は補充しても補充してもそれだけをどんどん食べられてしまうので」ということでした。

那覇市内のラーメン店。客は私を除き全員外国人旅行者。

お店にはお店の事情があります。

それをここで批判するつもりはありません。

ただ、これもインバウンドのもうひとつの姿だということを改めて感じました。

日本のお店で、日本料理を提供しているにもかかわらず

サービスは徐々にインバウンド・シフトしていき日本人客が離れていく。

訪日外国人旅行者が今後ますます成熟化していくことを踏まえると

そうした「日本人が行かない店」にはやがて彼らも行かなくなります。

こういったインバウンド観光の「影」の部分にも

実務、学術ともにもっと関心を払うべきではないか、

そんなことを考えた那覇出張でした。