最北端と最南端からDMOを考える


巷ではDMOが「流行語」になっていますが、個人的にはそろそろしっかりと再定義をするべきだろうと考えています。日本の場合は、政策としての「日本版DMO」が起点となって日本全国に政策メニューとしてのDMOが拡大しましたが、少なくとも私がメインフィールドにしているヨーロッパや中南米ではDMOは主要な政策にはなっていません。観光業界の人間や観光学の研究者にとっても、それは組織の分類であって、政策ではない。まして、もはや観光先進国として扱われる機会も増えてきた日本が国を挙げてDMOを推進していると知ると、みな「ユニークだね」と話します。

その理由は彼らにとってのDMOは、DM(destination management)のためのO(organization)であって、組織ありきの政策論が地域で空転することをよく知っているからです。重要なことは政策や体制、あるいは個々の事業に関する議論であり、その根源は「地域が観光によって解決するべき課題は何か」という問いに他なりません。その先に、それらを実現するべき組織の話が初めて出てくるのです。「DMOはつくったけど、何をすれば良いのか」という最近の悩みが、いかに本末転倒かという話になります。

ですので、法・政策論の立場からDMOを研究していると言うと、むしろ面白がられます。もちろん日本の観光協会とDMOは同一ではありませんが、分かりやすく言うと「観光協会を法・政策の視点で研究している」研究者が日本に殆どいないのと同じです。

実は、ありがたいことに、昨年度から日本最南端のDMOである「八重山ビジターズビューロー」のアドバイザーと、日本最北端のDMOになるかもしれない知床斜里町観光協会のDMOのアドバイザーを拝命しています。

いずれの組織でも論点になっているのが資源マネジメント。意外に思われるかもしれませんが、観光振興ではなく、いかに地域の資源をまもり、いかすかというのが主要なテーマなのです。そして実はヨーロッパを含めて世界的なDMOで議論されているのもこの資源マネジメントです。地域の資源を「どうするのか」を議論せずして、マーケティングも受入環境整備も、経済効果もありません。日本ではハワイ州のHawaii Tourism AuthorityがDMOの先進事例として取り上げられることが多いですが、欧米では、イースター島やガラパゴス諸島、イビサ島などもやはりよく取り上げられます。これらの共通点は、そう「島であること」。物理的に隔絶されている島のDMOが先進的な取り組みをせざる得ないのは、資源マネジメントが地域の最重要課題であり、その成否が地域の死活問題となるからです。

そういったことを踏まえると、島国・日本のDMOを巡る議論で、常に観光振興が先行し、資源マネジメントが後回しになるのはどうなのか、という疑問に直面します。

八重山と知床。資源も、規模も、地域性も、全く異なる両地域ですが、八重山は「島」であり知床は「半島」です。最北端と最南端から、もう一度「DMOとは何なのか」を問うていきたいと思っています。